先日、NHKで「人工知能 天使か悪魔か 2017」が放送されました。
ご覧になった方も多いかと思いますが、その中で、機関投資家(証券会社など)ではすでにコンピュータを使った投資手法が主流になっている、と紹介されていました。
その中でも近年増えてきているのが人工知能を使った投資手法で、番組で紹介されていたのは、人工知能が5分後の株価の上がり下がりを予測し、さらに、HFT(高頻度取引)と呼ばれるシステムにより、1秒間に1,000回以上もの発注を繰り返し、利ざやを抜いていく、というものでした。
ちなみに、ゴールドマン・サックスでは、こんな感じになっているそうです。
2000年のゴールドマン・サックスのニューヨーク本社では600人ものトレーダーが大口顧客の注文に応じて株式を売買していたそうですが、ゴールドマン・サックスのCFO(最高財務責任者)に就任予定のマーティ・チャベス氏は、「2017年現在で本社に残っているトレーダーはわずか2人です。空いた席を埋めているのは、200人のコンピューターエンジニアによって運用されている『自動株取引プログラム』です」と、ハーバード大学の応用計算科学研究所で開催された2017 CSE Symposiumで説明しました。
出典:Gigazine
昨今話題の人工知能ですが、清水亮さんはそれを3つの手法に分けています。
かいつまんで説明させていただきますと
◯知識ベース処理
→データベースを高速で処理する仕組み
◯機械学習
→大量のデータをもとに、統計学により未来予測をする仕組み
◯深層学習
→大量のデータをもとに、相関関係などにより未来予測をする仕組み
ということになろうかと思います。(不備、間違いなどあったらご指摘ください<(_ _)>)
昨今話題の将棋ソフト、ponanzaなどは、機械学習のAIを使用していたソフトで、2017年に深層学習を導入したようです。
囲碁ソフトAlphaGOも深層学習によって組まれ、強化されたソフトのようです。
さて、前置きが長くなって恐縮ですが、このように人工知能が目を見張る成果を出している昨今、我も人工知能を使って一儲けしたいぜよ、秒速1,000取引で利ざやを抜きまくりたいぜよ、と考えるのが人の情というものです。
そこで人工知能により運用されている投資信託がないか、調べてみました。
結論から申し上げますと、らしき投資信託は2商品だけ見つかりました。(2017年7月現在)
定義に賛否あると思いますが、ここでは機械学習と深層学習(deep learning)を用いている投資信託に絞らさせていただきました。
アルゴリズム取引自体はいくつもあると思われますが、小生も、そしておそらく読んでいただいている諸氏にしても、関心があるのはおそらくいわゆるAIの方だと考えました。
ひとつは三菱UFJ国債投信が運用している、AI 日本株式オープン(絶対収益追求型)で、もうひとつはyahooグループが提供している、Yjamプラス!です。
リンク:AI 日本株式オープン(絶対収益追求型)の評価と評判
リンク:Yjamプラスの評価と評判
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2018年2月17日追記
今日現在では、上記の他に、以下のAI投資信託も確認しております。
ちなみに、販売ランキングで人気のグローバルAIファンドは、AIを事業としている会社に投資をしており、AIが投資銘柄やタイミングを決めていてる投資信託ではありません。
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◯AI 日本株式オープン(絶対収益追求型)
現在日本で販売されている投資信託では、唯一深層学習(deep learning)を実装していると明言してる商品です。(小生調べ)
国内株式への投資と、先物の売りによって、相場の上下に影響されずに、絶対収益を狙うのだそうです。
発売前のバックテストの結果は以下のようです。
これを見ると、確かに右肩上がりで収益を出していますが、国内株式のインデックスに負けているように見えます。。。。。
ただし、インデックスの下落局面でも安定した収益を確保しているようで、このあたり、長期保有すればインデックスを凌駕する局面や、大きく財産を減らす事を回避できる場面があるのかもしれません。
2017年2月に発売ですが、発売以来の基準価格を見ると、以下のようになっております。
基準価格は10,000円程度に始まり、一度大きく値を落としたあと、現在は10,000円程度まで戻した格好です。
純資産総額も4月以降ほぼ横ばいで、あまり多く買われている印象は持ちません。
一方同時期の日経平均の動きを見ると
2月に約19,000円から、現在約20,000円と、おおよそ5%の伸びを示しております。
まず、この時期だけ見るとAI 日本株式オープン(絶対収益追求型)は日経平均の伸び率に負けています。
例えばマネック証券でAI 日本株式オープン(絶対収益追求型)を買うと、申込手数料2.16%、信託報酬率1.296%なので、ノーロード(申込手数料0円)かつ、信託報酬率が1%を切っているような日本株のインデックスファンドと比べると、だいぶ見劣りする感じがします。(*個人の感想です)
同時期のマネックス証券で現在(2017年7月6日)一番人気のある、日経225ノーロードオープン(申込手数料0円、信託報酬率0.864%)の成績を見てみると
2月の約13,000円から、現在の約13,750円と、やはりおおよそ5%の伸びを達成しております。
将来的にどうなるのかはもちろん予想はできないのですが、現状の運用成績と申込手数料、信託報酬率を考えると、今はちょっと買いづらいかなぁ、と小生は感じました。(*個人の感想です)
どうした深層学習!高頻度取引で利ざやを抜きまくるんじゃないのか?、と思わず突っ込みたくなります。(*AI 日本株式オープン(絶対収益追求型)がHFT(高頻度取引)を行っているのかどうかは不明です)
◯Yjamプラス
こちらの投資信託は、機械学習を実装し、yahooグループが持つ様々なビッグデータを解析、運用に用いているそうです。
AIが効率的に学習し予測精度を上げるためには、データ量だけでなく、その質が非常に重要です。ヤフーのマルチビッグデータは、一般的なニュースや天気、検索キーワードから、日本最大級のファイナンスメディアであるYahoo!ファイナンスを含む100以上のサービスデータまで網羅されているとても良質なデータです。「Yjamプラス!」で活用しているヤフーのビッグデータは、投資の世界においては屈指のデータ量だということができると考えています。
申込手数料3.24%(販売会社が定められる上限)、信託報酬率0.9936%になります。
申込手数料3.24%(販売会社が定められる上限)、信託報酬率0.9936%になります。
まぁ、投資というものはどの期間を取るかで評価はずいぶん変わるものだと思いますが、日経225ノーロードオープンと比べて、申込手数料を勘案しても、今のところ大体勝っている感じがします。(*個人の感想です)
設定来で見ると、10,000円から約10,600円と大体5%、AI 日本株式オープンと同じく2月ぐらいから見ると9,700円ぐらいからなので、約9%の伸長を示しております。
まぁ、投資というものはどの期間を取るかで評価はずいぶん変わるものだと思いますが、日経225ノーロードオープンと比べて、申込手数料を勘案しても、今のところ大体勝っている感じがします。(*個人の感想です)
販売窓口は以下の通りのようです。
販売窓口は以下の通りのようです。
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2018年1月28日追記
YjamプラスがYJFX!で、ネット経由で購入できるようになりました。
YJFXで購入した場合、購入手数料0、信託報酬0.9936%と、かなり魅力的な設定になっております!
リンク:YJFX!
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ところで、これだけ人工知能だAIだ深層学習だと世間で話題になっている割には、AIを用いた投資信託の数って少なすぎると思いませんか?
上記2つの投資信託を探したのは、小生がgoogle検索で調べた結果がまずひとつ。
もうひとつはマネック証券の投資信託の検索です。
「注目ワード」のタグのなかに「AI」とあって、クリックして検索してみたのですが、16本の投資信託がヒットしました。
その16本のうち、15本が国内、あるいは海外のロボティクス企業や、AI関連企業に投資をする商品で、AIで運用しますと謳っている商品はAI 日本株式オープン(絶対収益追求型)だけでした。
(*世の中には小生が見つけた2本の投資信託以外にも、AIで運用していますと謳っている商品があるかもしれません。その点ご了承いただきたくお願い致します)
しかし、2本しか見つからないというのはいかにも少ないですね。
なんででしょうか?
これは小生の推測ですが、やはりAIを使いこなせる技術者の不足と、バックテストなどの実績がまだ足りてない、という理由がまず考えられそうです。
もう一つ思うのが、AIを使った投資って、実はすごい儲かるからなんじゃないのでしょうか?
わざわざ他人に儲け話を持ってくる人はいない、という話の裏返しで、すごい儲かるものだから、機関投資家がシステムを囲い込んでるような推測も成り立つような気がしています。
もちろん真相のほどは分かりませんが。
先日、マネックス証券社長の松本大さんが以下のようなことをおしゃっていました。
前にも書いたことがありますが、問題は、運用やトレーディングの世界ではどうか?です。特にトレーディングの世界に興味があります。自分の専門分野なだけにAIに負けたくないと云うのもありますが、価格は常に売り買い同数で成り立っていて、常に結果正しかった人と間違ってた人が同数いる中で生成されているものなので、その価格をAIで分析しても、その答えには限界があるのではないか、しかもマーケットには、ミクロで見ると感情的な或いは不合理な点も多くあるので、必ずしもAIには向かないのではないか?などと思うのです。
マネックス証券と言えば、日本でいち早くネット証券会社を始めた会社のひとつで、カブロボ(アルゴリズム投資の投資信託)を販売するなど、新しい技術にはポジティブなな印象を持っていたのですが、この文章を読む限り、松本さんの意見は、AIを用いた投資に懐疑的なように小生には読めます。
ただ実際のところ、マネックス証券がAI投資を試していないわけがないと考えたほうが(小生には)自然なので、どの程度使用しているのか、テストだけなのか、一部実際の取引にも使用しているのか、興味深いところです。
以上が、小生が調べたAIを用いた投資信託についてのまとめとなります。
昨今話題のカブロボアドバイザーの件もあるのですが、投資信託にトピックを絞らせていただいたので、今回は言及は控えさせていただきました。
一部で話題のwealthnaviですが、金融アルゴリズムを用いている、と謳っており、今小生がトピックにしているAIによる投資とは今回は違うかな、と判断しました。
wealthnaviはアルゴリズム投資でETFを自動で売買してくれるサービスらしいので、まぁいわゆるファンドオブファンズと考えて良いのかと思います。
*本エントリーは個人の感想であり、個々の投資信託を推奨したり、また推奨しなかったりすることを目的に書かれたものではありません。
*本エントリーに掲載されたデータは、2017年7月6日時点のものです。
*もちろん投資は自己責任でお願い致しますw
◯2018年1月17日追記
続編のエントリーを書きました。
2018年1月17日までの、1年間パフォーマンスを比較しております。
ぜひご確認ください。
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各AI投資信託の評価と評判はこちらから(適宜更新中です)。
リンク:Yjamプラス!の評価と評判
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