解雇規制の緩和はロストジェネレーションを地獄に落とすのではないか?:裁量労働制の実態を考えてみる。

先般、安倍総理の国会答弁で、裁量労働制で働いてる会社員の労働時間が、一般の会社員よりも長いのか?短いのか?で、利用した資料の信憑性の問題から、安倍総理が発言を撤回するという悶着(もんちゃく)がありました。

 

裁量労働制は、うまく機能すると、労働時間そのものや、労働開始時間、労働終了時間などを社員が選択できるようになるので、働き方の自由度は高まるように思えます。

 

一方で、雇用者にとっては残業代を払わなくて済むようになるので、極端に言えば、働けるギリギリの量までの仕事量を、社員に負担させるインセンティブが働きます。

 

いわゆる定額働かせ放題ですね。

 

残業代が出ないブラック企業とか、一部ですでにそうした働き方をさせている企業は実在し、社会問題化して世間の耳目を集めています。

 

最近の求人を見てみると(なにせ44歳無職ヒキニートだから、毎日なんらかの求人情報は見ている)、給与に固定残業代(○○時間分)含む、という条件の求人が非常に多くなってきています。

大体20~30時間分の残業代が基本給に含まれているようですが、要するにこういう企業は、最初から残業代払う気はないよ、と言っているのと同じに見えます。

なかなか不気味なトレンドですね。

 

こういう現在の状況を考えると、もし裁量労働制を実施するならば(対象職種を広げるのならば)、労働市場流動性の確保とセットになっていなければなりません。

平たく言うと、雇用者が無理難題な働き方を突きつけてきたら、嫌だから辞めちゃう、辞めても自身の能力スキル相応の次の職場がすぐに見つかる、という状況を作り出しておかなければなりません。

 

この、労働市場流動性を確保するために、解雇規制の緩和が必要だと、多くの識者が述べています。

 

現在、日本の労働基準法では、解雇の条件が非常に厳しく定められています。

リンク:解雇と解雇理由~どんなときに解雇が許されるのか~

 

日本の企業は一度正社員として雇用すると、よっぽどの理由がない限り、社員を解雇できません。

 

ここ20年ほどで、非正規雇用の割合が急増したのも、正社員と違って、派遣契約を終了したり、アルバイトを解雇したりするのが容易だからです。

つまり、固定費としての人件費の調整弁に、非正規雇用を利用しているわけですね。

リーマンショックが起こった2008年には、大量の非正規雇用者が解雇され、年越し派遣村の問題などが起こりました。

 

そこで、正社員雇用のハードルを高くしている解雇規制を緩和することによって、企業が新たに正社員を雇用しやしくしよう、というわけです。

ただ、確かに解雇規制を緩和すれば、非正規雇用の人が正社員として雇用されたり、転職しやすくはなりますが、同時に解雇されやすくもなることも頭に入れておかねばなりません。

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先般、旭化成の社長が、アラフォー世代の管理職を期待される人材の層が薄いと述べて、物議をかもしました。

news.careerconnection.jp

今のアラフォー世代といえば、就職氷河期に直面した世代で、ロストジェネレーションともいわれています。

44歳無職ヒキニートの小生は、97年に大学を卒業しましたが、自分の1年上の代から、就活状況が激変したのを覚えています。

まさに、手のひらを返すという言葉がピッタリくる感じでした。 

 

44歳無職ヒキニートの小生ですが、現在の再就職活動の状況は惨憺たるものとなっております。

具体的に言うと、小生の年齢だとマネージメントの経験が無いと、なかなかまともというか、マシな求人がありません。

 

昨年4月から12月の間で、約250件の求人に応募して、面接までたどり着けたのがたったの2件。もちろん両方とも不採用という結果でした。泣いてもいいですか?

*マネージメント経験が無いだけが理由でもないんですけど、言いたくないのでここでは言いません。

 

現状、ロストジェネレーションの転職は、マネージメント経験が無いとかなり厳しい感じです。

前職でこの人はマネージャーになる資質と能力がある、とスクリーニングを抜けた人、つまりマネージャーの職歴がある人でないと、なかなか良い転職はできないようです。

 

中途採用をする企業が、採用面接で、職歴にマネージメント経験は無いけれども、見込みがありそうだから我が社で育てよう、みたいな感じで採用することはほぼ無い、と言っても過言ではないと思います。

 

前述リンクの

 まさにこの状況が現実として繰り広げられているわけです。

大体35~37歳ぐらいまでですね、マネージャーとしてのポテンシャルで、管理職候補として採用されるのは。小生の個人的感覚ですけど。

 

さて、このような状況で、もし解雇規制の緩和が行われたらどうなるでしょう?

嫌な事を書くようですが、いわゆるクビになりやすいタイプの人について考えてみます。

 

①仕事が本当に全然まったくできない人

能力が低いというよりも、おそらく発達障害や、ADHDなどの影響なのでしょうが、ビックリするほど仕事ができない人がたまにいます。

明らかに目に見えて仕事ができないので、周囲の評判や接し方が段々厳しくなっていきます。

日本の会社では”空気”がものを言うことも多いので、評判がすごく悪い人は解雇されやすくなるでしょう。

素行不良(特に人当たり)な人も、同じ理由で解雇されやすくなると思います。

 

②管理職から降格した人

マネージャーとして成果が出せず、降格して定型業務についている人。

給与が高いわりに、簡単な業務や、いわゆる窓際的なポジションに置かれて、周囲の評判を落とさないように息を潜めているようなタイプの人です。

なまじっか、管理職時代に無駄に肩で風を切ったりしていたら(もちろんそんな人ばかりじゃないですよ)、なおのこと周囲のしっぺ返しを恐れています。

 

年功序列、あるいは勤続年数により、高い給与をもらっているが、誰でもできるような仕事をしている人

その人ならではのスキルや社内人脈に薄く、新卒の人を入れて替わってもらっても、1年程度で習熟できるような業務を行っており、なおかつ給与の高い人。

悲しいことにと言うべきか、これで給与が低くても、中年以降はいつもこのリスクと隣り合わせです。

 

リストラ、という言葉が使われ始めたのは、2000年前後の頃だったと記憶しておりますが、まさに②、③のタイプの人が狙い撃ちにあい、あちらこちらで肩たたきが行われました。(肩たたきって死語ですかね?)

 

確かに解雇規制の緩和は、労働市場流動性を高めるとは思いますが、一方で、我々ロストジェネレーションは、今、そしてまさにこれから、狙われやすい世代に突入していくわけです。

 

無事出世できた人はいいです。

特殊なスキルを身に付けた人もいいです。

(特殊でなくても、経理財務(特に決算の経験)、知財、ITの経験は求人多いですよ)

ただ、なにぶん年齢の問題があるので、たとえ労働市場流動性が高まっても、我々ロストジェネレーションはまったく楽観視できない、と小生には思えます。

 

めでたく非正規雇用から正社員になれる人も出てくるでしょう。

そういうケースが増えれば良いな、とは小生も思います。

 

一方で、働き方改革なんて言われると、自分にはあまり良いことなさそうだな、とうすうす感じてしまうのも事実です。

金融緩和で求人倍率は上がったものの、多くの人がその恩恵を感じていないのとよく似ています。

 

嫌になったら机を蹴飛ばして、気軽に次の職場に移れるような社会状況になったら良いなぁ、とは思うものの、それには10年~20年ぐらいの時間がかかるのではないのでしょうか?

我々にはその時間の猶予はないですよね?

 

嘆いても仕方がない、と人は言うかもしれない。

でも、さすがに嘆いてもいい状況じゃないですかね?コレw

 

ちなみに、本当に机を蹴飛ばすと、器物破損になりかねないので、あまりおすすめしないですよw

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追記

労働者の労働時間に裁量を与えるのなら、フルフレックスを導入するだけで良いんですよね。その場合規定労働時間は働かないといけないけど、残業代と深夜割増は出ます。(裁量労働制でも深夜割増は発生しますが)